Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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世界はこう変わる

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2023年2月 4日

メルマガ 文明の万華鏡 第129号発行

1月25日にまぐまぐ社から、メルマガ「文明の万華鏡」第129号を発刊しました。以下はそのはじめの部分です。続きはまぐまぐ社のサイトで入手できます。

遅ればせながら、新年おめでとうございます。
新年、特に休んだわけでもないのに、心理的に蒸気機関の火を落としたような感じになったために再始動するのが億劫で、すると自分のやっていることが無意味なものであることが見えてきてしまう・・・という非生産的なサイクルに落ち込もうとしていました。

はじめに

(プーチン、24年大統領選にツバつける)

とは言いながら、国際情勢で今月目についたのはまずロシアのこと。プーチンが、「2024年の大統領選挙に出る」気配を濃厚に漂わせ始めました。11日、彼は年頭の閣議を開いたのですが(ズームで)、その席では国民の生活を整え、インフラを整備することを最初のテーマとしました。数年前、次の大統領選をめがけて「国民の生活を飛躍的に向上させるために」打ち出した「ナショナル・プロジェクト」という言葉が久しぶりに登場し、プーチンは対外経済関係を拡充すること、新たなサプライ・チェーンを樹立すること、道路・住宅等の充実、技術力の飛躍的向上、金融面での国家主権の向上、実質賃金・所得の向上、人口増、以上6の重点を提示しました。「ああ、プーチンは選挙戦を実質的に始めたな。他に適当な候補がいないからな」という印象を受けた次第です。

ウクライナ戦争にからんでは、マントゥーロフ副首相が軍需生産の遅れで満座(ズーム)環視の中、プーチンに厳しい叱責を受けました。「君は今やってますとか、計画を作りましたとか言うが、企業は国防省との契約はまだ何も結ばれていないと言っている。バカ言ってんじゃない。今月末までに結果をだせ」という趣旨。マントゥーロフの弁解の辞を読んでいると、兵器の大増産が実現するとは思えません。

(台湾問題は日米安保関係の縁を深めるか、逆に切るか、の踏み絵となる)

 もう一つ、日本にとっては安全保障の根幹、日米同盟関係の根幹に関わる台湾情勢。これまで日本での議論はわりと切迫感を欠き、台湾情勢を「海の向こうのよそごと。アメリカがやること」と捉えている感が抜け切れていません。「民主主義台湾を日米同盟で守る」というような建前を口先では繰り返しても、では台湾防衛のために自衛隊は何をするべきか、日本の基地からの米軍の出動を許すと、中国が日本を先制攻撃してこないだろうか、というところに思いを致すと、これはもうとても建前論ではすまない、防衛費増額のように閣議で決定して一件落着というわけにはとてもいかない、という段階に入ってきました。

例えば先週、米国のCSIS(戦略国際問題研究所)が、 "The First Battle of the Next War: Wargaming a Chinese Invasion of Taiwan"を発表しました。これは、米国が台湾を防衛するためには、在日の基地を使用することが不可欠、と言うか、在日の基地を使うことを前提として組み立てられています。さらに、台湾有事の場合、米軍と自衛隊の間での指令ラインをどうするかを明確に決めておく必要があると指摘しています。

日米連携を事前から明らかにしておけば、中国をそれだけ抑止できます。しかしそれでも中国が台湾侵攻を始める場合、中国は在日の米軍、自衛隊基地、あるいはロシアが今ウクライナでやっているように電力網等のインフラを攻撃、あるいはサイバー攻撃してくるでしょう。東シナ海と太平洋の間の航路を確保するため、中国軍は日本の南西諸島制圧にも乗り出してくるでしょう。核兵器での脅しをかけてくるかもしれません。これらに対する備えをどうするか、決めておかないといけません。

これらのことは普通だったら、国会などではとても通らないことですが、平和主義の公明党、立憲民主党がそれぞれハードラインの自民党、維新と組んだことで、両党の議論の切っ先は鈍るかもしれません。野党が、防衛費増のための増税をどうするか、という内向きの議論で終始してくれれば、政府にとっては御の字でしょう。

台湾防衛問題はつきつめれば、米か中かの選択を迫る「踏み絵」なのです。この選択を逃れられるのは、台湾自身が中国に歩み寄った場合、或いは中国経済が崩れた場合でしょう。もう一つ、日本が踏み絵を踏まないで済む、しかし日本自身が踏んづけられてしまう最悪のケースとしては、米中が手を握って「日本処分」を決めることでしょう。まあその場合、昔独立していた時代の沖縄が薩摩と清にやっていたように、米中の双方に友好を誓い、双方の交易を仲介して利を上げることもできるでしょうが。

ところで一人、ご紹介したい人がいます。私がウズベキスタンにいた時に知り合った、仙人みたいな日本人です。名を若林一弘といい、一言で言えば柳田国男と渡辺京二を合わせて2で割ったような、実に味のある、そして時空を超えた視点の随筆を書く人です。
彼は島根の出身で今はそこに居を据えていますが、これまではウズベキスタン、インドネシア、ネパール、中国の地方都市、インドのバンガロールなどなど、行きたいところ、住みたいところの大学で日本語を教えるという、豊かな(しかし清貧な)人生を過ごしてこられました。

今般「温泉津誌」という随筆書き下ろしを平賀英一郎という名で出版されたのですが、これは地元、温泉津の伝承をあれこれ紹介するのにひっかけて、オリエントの昔にまで自由に(しかし正確、かつ深く)想を遊ばせる、言ってみれば柳田国男の「遠野物語」をグローバルな文脈の中で書いた――そういったものになっています。
このような人は日本でもっと知られ、後々にまで伝えられなければいけないと思います。
というわけで、新年の目次は次のとおりです。

  戦争の終わり方――ウクライナ戦争の場合
  イラン・アゼルバイジャン対立の意味合い
  物事には反面がある――金利・国債・貿易赤字

  今月の随筆:「豚の発情を自動検知するAIカメラ」
  今月の随筆:「宇宙人」が電波である可能性
  今月の随筆:地球が逆回りになった場合の時間

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