Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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世界はこう変わる

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2022年12月30日

メルマガ 文明の万華鏡 第128号を発行しました

年の瀬。メルマガの「文明の万華鏡」第128号を発行しました。「まぐまぐ」社で定期購読いただければ幸甚です。
今月は、次のように始まっております。

はじめに

いよいよ歳末。昨年の歳末はつい、昨日のことだったような――と言えば、年寄りの感慨と言うことになってしまいますが。
 岸田政権はいろいろ不評でもうダメなのかと思っていたら、安保関連三文書と防衛費の大幅増、原発の再開、日銀の実質利上げ等々と、これまでの懸案を次々に解決していくからすごいと思います。思いますが、何か不思議なヴァーチャル感。「本当にやるのかよ。誰がやるんだよ」という感じ。
 この不思議なヴァーチャル感は、岸田総理がこれらの件を自分の言葉で説明する機会が少ないことにもよります。総理はいろいろな場に確かに「出席」はし、所信表明演説で課題を並べてみせはするのですが、なぜか「懸案を処理させている」だけ、懸案は役人たちが提示してきたもので、これを自民党の部会と役人の間で決めていく、そう見えてしまうのです。トランプ流に言えば、「あいつはlow energy」ということになります。
 
 世界について、今私が目を凝らしているのは、米中「新冷戦」が進むにつれて、途上国に対する米国政府の出方に変化が見られるということです。米ソ冷戦が激しかったころ、米ソ両国は途上国への影響力拡大を狙って、激しく競争しました。この時米国は、相手の途上国が独裁であろうと、腐敗していようと、とにかくソ連に取られないように、援助を続けたものです。この頃、南ベトナムの歴代政権について、「あれは腐敗しきったろくでなしだ。だが我々のろくでなしだ。だから支援を続ける」という言い方が米国では行われていたものです。
しかし1991年ソ連が崩壊して冷戦が終わった時、米国は「民主化」を唱えて途上国の独裁政権を倒す「レジーム・チェンジ」を恣に繰り返すようになり、途上国そしてロシアや中国から反発を受けるようになりました。
 そして最近では中国が、ソ連の持っていなかった経済力を武器に、途上国での影響をどんどん拡大しているものですから、米国もこの頃は政府・論壇双方で、途上国への姿勢を改めようとする動きが見られます。典型は12月15日、米国がワシントンで「米国・アフリカ・ビジネス・フォーラム」を主宰、実質的な首脳会談としたことです。
 これは、「民主化」だけを拙速に前面に打ち出す代わりに、経済援助(ODA)で途上国の経済・社会を近代化し、それによって民主化の土台を作るとともに、外交面での支持も得ようとしてきた日本のやり方と方向が同じです。喜ばしいことです。

新聞を見ていたら、25日渡辺京二氏が92歳で亡くなられたという記事がありました。彼は「逝きし世の面影」で大きな話題を作った市井の学者。大連で育っているから、ものの見方が大きい。その後日本共産党に入るも、1956年のハンガリー動乱鎮圧でソ連に幻滅。脱党して以後、熊本を拠点に在野の思想家・歴史家を通してきた人です。1998年出版された「逝きし世の面影」は大きな反響を呼びました。(以下Wikipedia)これは、近世から近代前夜にかけてを主題とし、幕末維新に訪日した外国人たちの滞在記を題材として、江戸時代を明治維新により滅亡した一個のユニークな文明として甦らせたものです。

言ってみれば、日本は江戸期に、市民社会とも言える文明を築いていたということを、生活実感をもって描き出しているのです。当時は江戸時代を単なる封建時代と捉えるより、高度の町人文化が栄えた時代として捉えなおす風潮が盛んで、この「逝きし世の面影」はその一つの頂点を成したとも言えるものです。江戸時代の実際は、そんないいことずくめではありませんが、私にとっては大変愛着のある本で、今でも本棚に大事にとってあります。ご冥福を祈ります。


というわけで、今月の目次は次のとおりです。
 
 ウクライナ戦争についての様々のトピック
 (第2次大戦での米国のソ連援助は、今のウクライナ援助と酷似)
 (フィンランド戦争とのアナロジー)
 (メドヴェージェフ再び登場)

 割れて浮動し始めたユーラシア大陸の地殻――国際政治の話し

 ユーラシアの兵器商人Bout釈放さる

 ロシア――財政赤字を一夜で黒字に変える剛腕国家

 5Gの変質

 今月の随筆:白人男性がアグレッシヴなのは寄生虫のせい

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