Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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世界はこう変わる

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2022年11月24日

11月の世界情勢 メルマガ文明の万華鏡第127号より

メルマガ「文明の万華鏡」第127号をまぐまぐ社から発行しました。
その冒頭と目次をご紹介します。

文明の万華鏡第127号

はじめに

 今月目立ったのは、東南アジア諸国で行われたG20、東アジア諸国首脳会議、APEC首脳会議などの長丁場で、中国の習近平国家主席が新たなイメージを打ち出そうとしていたことです。中国のテレビ・ニュースなどを見ていると、英明で寛大、慈悲深い君主なのだなと、しみじみと思わせられるように映っています。
  
(日本にスマイルする習近平)

安倍総理に対しては身構えていた習近平主席も、岸田総理に対しては自然なスマイル。「日本との関係は重要で、これからも戦略的見地に基づき関係を進めていきたい」という趣旨を述べました。他の会談、そして外交部スポークスマンの発言を見ても、以前の「戦狼外交」を思わせる攻撃的なスタイルは影を潜めました。
やればできるのだ、と思う一方、なぜここまで振り付けを変えたのかと考えてみますと、やはりロシアの没落が響いているのだと思わざるを得ません。つまり、中国はこれから一国だけで、ロシアの助けなしに、米国や西側と対峙しないといけない。これまでの攻撃的姿勢では、敵ばかり増やしてよくない・・・こういう計算が働いているのだろうと思います。

来年3月人民代表大会で、中国の外相は交代します。王毅は一段上の外交担当の政治局員に昇格するのですが、外回りは外交部長の仕事になります。ソフト・タッチの外交を展開することになるでしょう。日本としても、場合によっては中国と協調外交を展開する時も出てくるでしょう。ただ、中国は有利になればまたいつでも狼に戻りますので、先端技術の輸出制限など、抑止措置は十分とった上での付き合いになるでしょう。「片方の手で握手。片方の手でびんた」という、世界では当たり前の外交は、日本人の苦手とするところです。政府に親中、あるいは反中一辺倒の外交を強いることはやめましょう。

(「大気の状態が不安定」な世界の景気)

今月は、円安が円高に転じる画期点になったようです。米国のインフレが少し静まり、利上げの勢いが鈍ると思われたこと、そしてデジタル通貨のFTX社が破綻して、それを現金化できるのが円だけになったために需要が殺到したことなどが円高をあおりました。

経済では、通貨レートや株価の値動きの幅が大きくなっています。それは、2008年のリーマン恐慌以来続けられてきた金融大緩和が引き締めに入り、金利が上昇していくつもの投機商品が破綻、まだ市場でだぶついている資金が、投資先を必死で探しているからでしょう。こういう時、資金は金に向かうだろうし、千号で指摘したとおり、2008年のリーマン恐慌の後、金価格は次の動きを示しています(なお筆者は以前から金に投資していますが、ここに書いていることは、私利を狙ってのことではありません)。

――金は2008年1オンス平均871ドルから2009年から2012年にかけて急騰、1770ドルに達した。その後下降を始め、2018年には1269ドルになっている。この年から再び上昇を開始し、2020年から22年にかけては2度、2000ドルを越えたが、利上げでドルが上昇し始めたことで、ドル表示の金価格は頭打ちになっている。いずれにしても、この間ドルは金に対してほぼ半分に減価している――

ただ後で言うように、「ウクライナ停戦」が動き始めますと、原油・ガス等から投機資金が一斉に引いて、価格が実勢以上に急落し、先進国のインフレを抑える可能性があり、そうなると利下げ期待から株式等は一時的に急騰するでしょう。

(いつまでもつの、岸田政権)

岸田総理外遊中、日本の国内政治は静かでしたが、帰ってきたとたん、寺田総務相辞任でまたがたがた。辞任のドミノそのものです。一度これが始まると、野党もマスコミも「これで食える」と思うものですから、簡単なことでは止まらないでしょう。何か大事件、たとえばリーマン並みの恐慌などが起きれば、こんなドミノは簡単に止まってしまうのですが。

日本の政治家は世論対策、マスコミ対策ばかり目がいって、国会・政治をプロフェッショナルに回す人が本当に少なくなってしまいました。官邸スタッフも官僚出身者が多くて、そのあたりの人脈・経験・嗅覚が足りません。安倍政権時代の経産省・警察系官僚、現在の財務省系官僚のいずれも、それは共通しています。以前は、総理と長年付き合ってきた新聞記者などが秘書官になって、その任を務めましたが、それだけの能力・意欲を持った記者はもういないのでしょうか。

かくて「エリートの空洞化」が日本、いや世界の先進国すべてを通じての問題。多分、一人一票の普通選挙がこのような現象を生んでいるのでしょう。近代国民国家の行き詰まり。教育など小手先の改革では、変えることはできないでしょう。どうしたらいいか、これからどうなるか、興味深いところです。

 というわけで、今月の目次は次のとおりです。

目次
 繰り返されるか、世界大恐慌と計画経済の台頭
 「ウクライナ停戦」の波紋と歩留まり
 エルドアン大統領は現代のスルタンへ
 今月の随想:プーチンはいつ理性を失ったのか?
 今月の随想:AIの自動運転なんて本当にできるのか?

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