メルマガ 文明の万華鏡第103号発刊
月刊メルマガ「文明の万華鏡」第103号をまぐまぐ社から発行しました。
その冒頭の部分を抜き書きします。
はじめに
今の菅内閣は、「安全保障とか憲法とか大きなことを言わずに、身近な問題を次から次に片付けてくれる」、つまり市役所の何でもやる課の全国版みたいなもの。スマホの料金まで下げてくれるというから、国民にとっては言うことなし。野党不要、官僚の上に自民党が乗って動かしていく、日本という変則国家の本質を体現したものとなっています。
そのせいかどうか、安倍内閣時代あれほど世間で話題になった内閣国家安全保障局がこの頃はどうもぱっとしない。各省から安全保障関係の情報を吸い上げ、政策をまとめて各省を調整していくのが任務のはずが、このごろは肝心の国家安全保障会議大臣会合もほとんど開かれていません。
唯一戦略的に見えるデジタル庁の新設も、いったい何をどうするつもりなのか皆わからないまま、とにかく人員・予算を各省庁から吸い上げるという話だけに還元されています。「・・・を一括して調整」するための役所を新設すると、既存の省庁から十分の人員・予算を集めることもできない中で、結局調整の主体ではなく、one of themになって決定のスピードを遅らせるだけ、という問題が生ずるでしょう。それは環境庁新設(1971年)の時に、起きています。
菅内閣の行方にも黄信号がともり始めました。一つはコロナの再蔓延と21日からの三連休前後の政府の迷走ぶりで、菅総理の得意の行政手腕に「?」がつきました。Go toキャンペーンは、種々業界、地方政治の利害等が集約された問題で、菅官房長官と二階自民党幹事長は深く関与していたことでしょう。第2波が生じたときの心づもりと言うか、飲食店への時短要請に伴う補償金支払いの中央・地方分担等をあらかじめ考えておかなかったため、もめたわけです。
もう一つは、日本学術会議問題で、杉田官房副長官の存在がマイナスの脚光を浴びたことも、菅政権の土台の一つである警察の手を縛っているのではないかということです。警官の不祥事が報道されるたびに、この手の事件が報道されるのを抑えるだけの力が、杉田・警察方面にはなくなってきたのではないかと勘ぐってしまいます。
もう一つは、連立相手の公明党が、菅政権実現の配当を求めていることです。公明党は、現在副代表の斎藤鉄夫氏を衆院選に、岸田自民党前政調会長の縄張りである広島から立候補させようとしているのですが、これを山口公明党代表に食事の席で告げられた菅総理が黙っているままだった、つまり反対しなかったということは、自民党内の亀裂を生む可能性があります。怒った岸田派が、現在鳴りを潜めている麻生一派を引き込みますと、両派所属の国会議員数で菅・二階の連合をしのぎ、竹下派と安倍前総理の細川派の去就が重要になります。ここで安倍氏が妥協候補として三度目の総裁、総理の地位に就く、こういうことも考えられる・・・。
と思っていたら、安倍氏事務所が「桜を見る会」で公選法違反・政治資金規正法違反を冒し、そのことを安倍氏が知りながら国会で虚偽の否定答弁をしていた疑いが濃厚になってきました。まるで、安倍氏の動きを封じるための動きのように見え、いったい何が背後にあるのか、興味津々。いずれにしても、岸田氏は派の代表としての鼎の軽重を問われる可能性も出てきたということではないでしょうか?
面白いことに、今の世界の主要国の首脳で落ち着いた立場を持っている人は一人もいません。ひところ回復基調にあったドイツのメルケル首相も、この頃ではコロナ第二波でまた失速しましたし、いずれにしても来年9月の総選挙を契機に首脳の座からは退く運びになっています。そして与党CDUは、メルケルの後継者を定めることがまだできていません。
世界はどこもあっぷあっぷ。トランプは民主主義、選挙という近代の価値観、制度に不信任をつきつけたはいいが、何も代案を示すこともなく、世界でのリーダーシップを示すこともなく、G20会合を抜け出してゴルフ三昧の有様です。よくまあこれで世界は壊れない。と言うか、彼らはもともといなくてもいい人たちだったことがばれてしまった、と言うか。ポスト近代の政治学が求められているのではないでしょうか。
というわけで、今月の目次は次の通りです。
国会・総理官邸・マスコミばかり見て、顧客=国民の目でものごとを
点検しないキャリア官僚
米国内の党派対立――一体何のために?
バイデンは尖閣・台湾を見殺しに?
RCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)調印で、東アジアは中国の経済圏に?
ソ連社会主義は73年で崩壊・中国は?
「プーチンは旧ソ連域内での力を失ってきた」のか?
今月の随筆:人里に出る猛獣たち
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